その他の写真・鬼面 3 [ 17 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 16:25:42
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
今昔百鬼夜行之図は、江戸時代の絵師・鳥山石燕によって描かれた妖怪絵巻で、幻想と風刺が織り交ぜられた傑作です。夜の闇に紛れて行進する妖怪たちは、ただの怪異ではなく、人間の欲望や愚かさを象徴する存在として描かれています。石燕は、古典や民間伝承を巧みに取り入れ、独自の美意識で妖怪に命を吹き込みました。滑稽さと不気味さが共存するその画風は、見る者に畏怖と興味を同時に抱かせます。今昔百鬼夜行之図は、単なる妖怪図鑑ではなく、時代の空気を映す鏡であり、人間の内面を映し出す芸術作品なのです。
その他の写真・鬼面 3 [ 15 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 16:23:31
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
黒石寺の鬼子面(吽)は、岩手県奥州市に伝わる国指定重要無形民俗文化財「蘇民祭」で用いられる神聖な面の一つです。吽形は口を閉じた姿で、静寂と終焉を象徴し、阿形と対をなして宇宙の始まりと終わりを表します。この面は、厄除けや五穀豊穣を祈る儀式において、神の化身として登場し、参加者の穢れを祓う役割を担います。力強く彫られた表情には、古代から続く信仰と地域の精神性が宿り、見る者に畏敬の念を抱かせます。黒石寺の鬼子面(吽)は、単なる祭具ではなく、土地の歴史と人々の願いを背負った文化の象徴です。
その他の写真・鬼面 3 [ 14 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 15:57:24
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
白阿面(はくあめん)は、念仏剣舞に用いられる面のひとつで、清浄無垢な霊性を象徴する存在です。白色の面肌は死者の魂や浄土の世界を表し、舞手がこの面を着けることで、俗世を離れた神聖な領域へと観客を導きます。面の表情は穏やかで静謐、眼差しには慈悲と鎮魂の意が込められています。白阿面は、剣舞の中でも特に祈りの強い場面や、亡者供養の演目で用いられることが多く、舞の所作とともに霊的な浄化を担います。面の造形には地域ごとの特色があり、登米地方では木彫に白土を塗り重ね、素朴ながらも深い精神性を湛えています。白阿面は、念仏剣舞の根底にある「踊りによる供養」の思想を体現する、重要な文化的象徴です。
その他の写真・鬼面 3 [ 12 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 15:42:38
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
石見神楽面「大江山」は、鬼退治伝説を題材とした演目「大江山」に登場する鬼たちの面で、荒々しく迫力ある造形が特徴です。特に酒呑童子を象徴する面は、赤や黒を基調に鋭い牙、怒りに満ちた眼差し、逆立つ髪などが施され、観客に強烈な印象を与えます。石見神楽の中でも「大江山」は勇壮な舞と激しい囃子が魅力で、面の表情が物語の緊張感を高めます。面は桐材や檜材で作られ、手彫りと彩色により一つ一つ異なる個性を持ちます。神楽師の動きと連動し、鬼の威圧感や悲哀をも表現するこの面は、石見神楽の芸術性と物語性を象徴する重要な存在です。
その他の写真・鬼面 3 [ 13 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 15:54:24
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
畑野太鼓面(はたのたいこめん)は、新潟県佐渡島の畑野地区に伝わる郷土芸能「鬼太鼓」で使用される面です。鬼太鼓は、豊作祈願や厄除けを目的とした伝統行事で、鬼役が太鼓を打ち鳴らしながら各家々を練り歩きます。畑野太鼓面は、力強くもどこかユーモラスな表情が特徴で、赤や青の彩色に金箔を施した豪華な装飾が施されています。面の造形は、鬼の荒々しさと人間味を併せ持ち、地域の職人が一つひとつ手彫りで仕上げます。この面は単なる仮面ではなく、畑野の人々の信仰や美意識、共同体の絆を象徴する文化財でもあります。近年では保存活動も進み、地域外からの関心も高まっています。
その他の写真・鬼面 3 [ 11 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 15:12:00
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
古戸花祭りに登場する「山見鬼(やまみき)」は、山の神の使いとして村に降り立つ霊的な存在です。面は赤褐色で、鋭い眼差しと大きく裂けた口が特徴。これは山の霊力と畏怖を象徴し、見る者に自然への敬意を促します。山見鬼は、春の訪れとともに山から里へと降り、豊穣と安全を祈願して舞を披露します。その動きは荒々しくも力強く、山の生命力を表現しています。面の造形には地元の木材が使われ、手彫りで仕上げられるため、一本一本に異なる表情が宿ります。祭りでは、山見鬼が家々を巡り、邪気を祓い、子どもたちに福を授けるとされ、地域の人々に深く親しまれています。自然と人との結びつきを体現する、古戸花祭りの象徴的存在です。
その他の写真・鬼面 3 [ 10 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 14:50:13
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
八正寺の追儺面「赤鬼」は、古来より伝わる厄除け儀式「追儺式」に登場する象徴的な面で、邪気を祓い、地域の安寧と五穀豊穣を祈願するために用いられます。赤鬼の面は、怒りに満ちた表情と鮮烈な朱色が特徴で、災厄を退ける力を視覚的に表現しています。大きく見開いた目、鋭く裂けた口、角のある額など、力強く彫られた造形は、見る者に畏怖と浄化の感覚を与えます。この面は、地元の職人によって丹念に作られ、木彫に漆を重ねた重厚な仕上がりで、単なる仮面ではなく、信仰と祈りが込められた神聖な道具として扱われています。
その他の写真・鬼面 3 [ 10 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 14:52:24
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
追儺式では、赤鬼が堂内や境内を練り歩き、太鼓や法螺貝の音に合わせて邪気を祓う所作を見せます。時には観客に向かって威嚇するような動きを見せることもありますが、それは悪を退ける力の象徴としての演出であり、参加者は豆を投げることで自らの災いを鬼に託し、外へと追い出すと信じられています。八正寺の赤鬼面は、地域の伝統文化と信仰が融合した貴重な民俗資料であり、年に一度の儀式を通じて、人々の心に浄化と再生の力をもたらす存在として、今も大切に受け継がれています。
その他の写真・鬼面 3 [ 9 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 14:42:24
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
八正寺の追儺面「青鬼」は、地域に伝わる鬼会式(おにえしき)という厄除け行事に登場する象徴的な存在です。この青鬼は、赤鬼とともに7年に一度の特別な法要に現れ、境内の舞台で舞を披露しながら、無病息災と家内安全を祈願します。面の造形は、怒りを湛えた眼差しと鋭い牙、力強い輪郭を持ち、青色の肌は冷静さと霊的な浄化力を象徴しています。その姿は恐怖を喚起するだけでなく、災厄を祓う神聖な力を宿すものとして、地域の人々に畏敬の念をもって迎えられています。
その他の写真・鬼面 3 [ 9 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 14:42:55
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
この鬼会式は、平安時代から続く八正寺の伝統行事であり、松原八幡神社との深い関係の中で育まれてきました。青鬼の舞は、単なる演出ではなく、古来より伝わる密教的な祈祷の一環として位置づけられ、地域の人々の暮らしと心を守る役割を果たしています。明治の神仏分離令によって多くの堂宇が失われた後も、八正寺はその信仰と文化を受け継ぎ、現在も播磨西国三十三所観音霊場第6番札所として参拝者を迎えています。青鬼の面は、その歴史と信仰を体現する芸術品であり、姫路の海辺に根ざした精神文化の象徴とも言えるでしょう。
その他の写真・鬼面 3 [ 8 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 14:37:02
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
北上鬼剣舞(きたかみおにけんばい)は、岩手県北上市に伝わる勇壮な郷土芸能で、鬼の面をかぶった踊り手が太鼓と笛の音に合わせて舞う伝統的な剣舞です。起源は中世の念仏剣舞にあり、亡き人の供養や悪霊退散の願いが込められています。踊りは力強く、足踏みや剣の振りが激しく、鬼の面と衣装が観客に迫力と神秘性を与えます。現在では地域の祭りやイベントで披露され、保存団体によって継承されています。北上みちのく芸能まつりでは、数百人が一斉に舞う「百鬼踊り」が名物となっており、北上の文化と魂を象徴する舞として多くの人々に親しまれています。
その他の写真・鬼面 3 [ 7 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 13:09:00
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
瀧山寺の追儺面「祖父鬼(じじおに)」は、愛知県岡崎市にある瀧山寺で毎年節分に行われる伝統行事「鬼祭り」に登場する面のひとつです。この祭りは、鎌倉時代から続く国指定重要無形民俗文化財であり、厄除けと五穀豊穣を祈願する儀式として知られています。祖父鬼は、赤鬼・青鬼とともに登場する三鬼の中で最も年長の存在であり、白髪の長髪と皺のある顔立ちが特徴です。その姿は、力強さよりも知恵と経験を象徴しており、祭りの中では神聖な役割を担う「火の神」として登場します。面の造形は、木彫りに胡粉と彩色を施したもので、表情には威厳と慈悲が宿り、観る者に畏敬の念を抱かせます。
その他の写真・鬼面 3 [ 7 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 13:13:05
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
祭りのクライマックスでは、祖父鬼が松明を手にして登場し、火の力で邪気を祓う儀式を行います。この場面は、観客にとって最も印象的な瞬間のひとつであり、祖父鬼の動きには年老いた神の威厳と静かな力強さが感じられます。赤鬼・青鬼が荒々しく舞うのに対し、祖父鬼はゆったりとした所作で場を鎮め、火の神としての神秘性を際立たせます。その存在は、単なる鬼ではなく、自然の力や祖先の霊を象徴する神格化された存在として、地域の人々の信仰と文化の中に深く根付いています。祖父鬼の面は、瀧山寺の鬼祭りにおいて、時間と伝統を超えて語り継がれる精神的な柱のような役割を果たしているのです。
その他の写真・鬼面 3 [ 6 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 13:04:25
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
瀧山寺の追儺面「孫鬼(まごおに)」は、平安時代の儀式「追儺(ついな)」に由来する厄除けの面で、瀧山寺独自の伝承と造形美を備えています。孫鬼は、赤黒い肌に鋭い牙、怒りと哀しみが交錯する表情を持ち、祖父鬼・父鬼とともに三代の鬼として登場します。孫鬼は若さと未熟さを象徴し、荒々しい動きで邪気を祓う役割を担いますが、その眼差しには人間の業や苦悩を映す深い情感が宿っています。面は木彫彩色で、力強い彫りと繊細な彩色が特徴。瀧山寺の追儺式では、孫鬼が堂内を駆け巡り、観衆に向けて厄を祓う所作を見せ、地域の無病息災を祈願します。芸能と信仰が融合したこの面は、瀧山寺の文化的象徴でもあります。
その他の写真・鬼面 3 [ 5 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 12:51:39
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
瀧山寺の追儺式に登場する「祖母鬼(ばばおに)」は、古代の鬼面文化と民間信仰が融合した象徴的な存在です。瀧山寺は愛知県岡崎市にある古刹で、毎年節分の時期に行われる追儺式では、厄を祓い福を招くために多様な鬼面が登場します。その中でも祖母鬼は、白髪を振り乱し、皺の刻まれた面をつけた老女の姿で現れ、観客に強烈な印象を与えます。彼女は単なる恐怖の象徴ではなく、老いと知恵、そして過去の罪や穢れを背負う存在として、儀式の中で重要な役割を果たします。
その他の写真・鬼面 3 [ 5 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 12:55:25
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
祖母鬼の登場は、若い鬼たちの暴れを制し、秩序を取り戻す場面で特に際立ちます。その動きは緩慢ながらも威厳に満ち、観客の笑いと畏怖を同時に誘います。面の造形には、木彫りの技巧と民俗的な感性が込められており、表情には哀しみと怒り、慈しみが混在しています。祖母鬼は、追儺式において「鬼を祓う鬼」としての役割を担い、人々の心の闇や社会の不調和を象徴的に浄化する存在です。その姿は、現代においても老いの尊厳や過去との対話を促す文化的メッセージとして、深い意味を持ち続けています。
その他の写真・鬼面 3 [ 4 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 12:48:02
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
河童(かっぱ)は、日本の伝統的な民間伝承に登場する水の妖怪であり、古くから人々の暮らしと密接に関わってきた存在である。主に川や池、沼などの淡水域に棲むとされ、その姿は地域によって多少異なるものの、共通して小柄な人型で、緑色の肌、亀のような甲羅、手足の水かき、そして頭頂部にある「皿」が特徴とされる。この皿には水が満たされており、河童の生命力や力の源とされている。皿の水がこぼれると力を失い、動けなくなるという言い伝えもある。
河童はいたずら好きな性格で知られ、人や馬を水辺に引きずり込んだり、尻子玉(しりこだま)と呼ばれる魂の象徴を抜き取るという恐ろしい話も語られてきた。一方で、礼儀を重んじる一面もあり、深々と頭を下げると皿の水がこぼれてしまうため、逆に人間が礼儀正しく接することで河童を退けることができるという説もある。好物はきゅうりで、河童を鎮めるために川に流して供える風習が各地に残っている。
河童の伝承は、水難事故への戒めとしての役割も果たしてきた。子どもが不用意に川に近づかないようにするため、河童の話は恐怖と教訓を込めて語られてきたのである。しかし、すべてが恐ろしい存在というわけではなく、地域によっては河童を神聖視し、農業や漁業の守り神として祀る例もある。薬草の知識を授けたり、人間と友好関係を築いたという話も残されており、その性格は一様ではない。
岩手県遠野市の「カッパ淵」では、河童にまつわる伝承が数多く残り、観光資源としても活用されている。九州地方では「ガタロ」や「エンコ」と呼ばれ、より獰猛な性格を持つとされるなど、地域ごとの違いも興味深い。現代では、河童は漫画やアニメ、観光地のマスコットとして登場し、ユーモラスで親しみやすいキャラクターとして再解釈されている。
河童は単なる妖怪ではなく、日本人の自然観や死生観、水との関わりを象徴する存在である。恐れと親しみが同居するその姿は、時代を超えて人々の心に生き続け、今なお想像力を刺激し続けている。
その他の写真・鬼面 3 [ 3 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 12:44:44
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
北上市立鬼の館に所蔵されている「弥五郎どん」の面は、東北地方に伝わる鬼神信仰と南九州の巨人伝説が交錯する、稀有な民俗資料です。この面は、宮崎県都城市の「弥五郎どん祭り」に登場する巨人・弥五郎どんを象ったもので、堂々たる顔立ちと力強い造形が特徴です。大きく張り出した額、深く刻まれた眉間、鋭く見開いた目は、見る者に畏怖と敬意を抱かせる造形美を備えており、地域の守護神としての威厳を感じさせます。素材には木や和紙、漆などが用いられ、手仕事による細やかな彫刻と彩色が、祭礼における神聖性と芸術性を融合させています。
その他の写真・鬼面 3 [ 3 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 12:45:29
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
弥五郎どんは九州の地で「国を守る大男」として語り継がれてきましたが、その力強さと神秘性は、東北の鬼信仰とも通じるものがあります。北上においてこの面が展示されることで、地域を越えた民俗の交流が可視化され、来館者に「鬼とは何か」「神とは何か」という問いを投げかける存在となっています。弥五郎どんの面は、単なる祭具ではなく、地域の記憶と信仰をつなぐ文化の架け橋として、鬼の館の展示の中でもひときわ異彩を放っています。
その他の写真・鬼面 3 [ 2 - 1 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 12:41:39
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
北上市立鬼の館に展示される金澤翔子の書「鬼」は、力強く魂を揺さぶる文字です。東北に根付く鬼の文化――畏怖、祈り、境界の守護者としての存在――を、翔子の筆が鮮烈に表現します。墨の濃淡、筆の勢い、余白の呼吸に宿るのは、鬼の荒々しさと人間の内なる闇。ダウン症の書家として世界に感動を与える翔子が、この地に刻んだ「鬼」は、恐れと敬意が交錯する象徴です。館の中心に据えられたこの作品は、訪れる人々に深い問いを投げかけます。
その他の写真・鬼面 3 [ 1 - 2 ]
撮影日 2025/06/29 12:19:59
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
北上市立鬼の館に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが「北上鬼剣舞 大型鬼面」の圧倒的な存在感です。高さ約3メートルを超えるその巨大な面は、展示室の中央に堂々と鎮座し、まるで空間そのものを支配しているかのような迫力を放っています。鋭く見開かれた目は来館者の視線を捉えて離さず、大きく裂けた口元からは、鬼剣舞に込められた祈りと怒りの感情がにじみ出ているようです。額に刻まれた深い皺や、力強く隆起した頬の筋肉の表現は、単なる装飾ではなく、鬼が持つ霊的な力を象徴するものとして、見る者に畏怖と敬意を抱かせます。
この鬼面は、岩手県北上地方に古くから伝わる伝統芸能「鬼剣舞(おにけんばい)」の象徴であり、悪霊退散や祖霊供養、五穀豊穣を願う舞の精神を具現化した存在です。舞手が身につける面を巨大化したこの展示は、鬼剣舞の神秘性と力強さを直感的に伝える役割を果たしており、訪れる人々に「鬼とは何か」「舞とは何か」という問いを静かに投げかけてきます。面の前に立つと、まるで鬼の息遣いが聞こえてくるような錯覚に陥り、太鼓の音と舞の鼓動が空間に響いているかのような感覚に包まれるのです。
その他の写真・鬼面 3 [ 1 - 2 ]
撮影場所 北上市立鬼の館
撮影日 2025/06/29 12:19:59
カメラ NIKON D810
レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
この大型鬼面は、単なる展示物ではなく、北上の人々が代々受け継いできた精神文化の象徴でもあります。鬼剣舞は、鎌倉時代に源義家の戦勝祈願に由来するとも言われ、武士の魂と民衆の祈りが融合した芸能として、長い年月をかけて地域に根づいてきました。面に込められた怒りや威厳の表情は、災厄を祓い、祖霊を慰めるという舞の本質を体現しており、鬼は恐怖の対象であると同時に、守護と浄化の力を持つ存在として崇められてきました。造形面では、木材を丹念に彫り上げ、漆黒の塗装で仕上げた力強い輪郭が印象的で、眉間の皺や牙の彫り込みなど細部に至るまで職人の技術と精神が宿っています。面の周囲には鬼剣舞に用いられる衣装や太鼓も展示されており、舞の世界観を立体的に体感できる空間が広がっています。この鬼面は、北上の風土と人々の信仰、そして芸能への敬意が結晶した芸術作品であり、現代に生きる私たちに、祈りのかたちと地域の誇りを静かに語りかけてくるのです。